第1章 土台
体で拍をとる
日本でギター教室を運営する講師が書いています。 公開日 2026年10月2日
拍をとる基本動作
演奏者は、身体の一部(足、腰、首など)を規則的に動かして拍目を作ります。原則として、その動作の1サイクルの長さを1拍の長さとします。
足を踏む(踏んだ瞬間が1拍目)→ もう一度足を踏む(踏んだ瞬間が2拍目)
1拍目から2拍目までの長さが1拍です(拍目と拍の長さの違いは「時計で考える」で扱いました)。
テンポの範囲
個人差もありますが、BPM 30以下(1拍の長さが2秒以上)になると、間隔が広すぎて拍として感じにくくなります。逆に BPM 240以上(1拍の長さが0.25秒以下)になると、間隔が短すぎて捉えるのが困難になります。無理なく捉えるには、BPM 60〜180 の範囲が良いでしょう。
例外として、極端に遅いテンポでは、拍の2倍の速さで足踏みします(1拍に2回)。極端に速いテンポでは、拍の半分の速さで足踏みします(2拍に1回)。この連載では、これを「倍で取る」「半分で取る」と呼びます。
- 倍で取る:1回目の足踏み(1拍目)→ 2回目(1拍目と2拍目の中間点)→ 3回目(2拍目)
- 半分で取る:1回目の足踏み(1拍目)→ 2回目(3拍目)
なお、足踏みの動作の1サイクルを1拍と捉え直すと、倍で取った場合は元の1拍が2拍分の長さになるので、演奏はハーフタイム・フィールに感じられます。半分で取った場合は元の1拍が半拍分の長さになるので、ダブルタイム・フィールに感じられます。
(ダブルタイム・フィール、ハーフタイム・フィールは、一般には演奏されている曲の拍の捉え方を倍・半分にすることを指す言葉です。演奏自体が変わらなくても、聴く側が拍の取り方を変えるだけでフィールが変わって感じられる、ということです。)
基本拍分割の実演
拍目を作る動作は、2つの動作の組み合わせです。例えば足踏みを続けるには、1回目の足踏みのあと、地面から足を離さないと2回目の足踏みはできません。この足を地面から離す動作(足上げ)を、基本拍分割のタイミングに利用します(基本分割は「拍子と拍分割」で扱いました)。
3等分割では、2つの動作を3か所に充てるので変則的になりますが、足踏みのタイミングを拍目とすることは、2等分でも3等分でも共通です。なお、足上げと表現しましたが、足裏をすべて地面から離すと動作を維持するのが難しいため、かかとやつま先だけを離すと良いでしょう。
基本拍分割 1/2
足踏み(1拍目)→ 足上げ(1拍目と2拍目の中間点)→ 足踏み(2拍目)
基本拍分割 1/3
足踏み(1拍目)→ 待ち(1拍目から1/3拍進んだ点)→ 足上げ(1拍目から2/3拍進んだ点)→ 足踏み(2拍目)
これより細かい分割は、身体の動作には充てません。一般的なテンポでは時間が短すぎて、かえって楽器演奏の支障になる可能性が高いからです。それより細かいタイミングは、拍をとる基本動作を土台にして、声を使ったり、ほかの演奏されている音を耳で捉えたり、演奏する楽器の操作方法を頼りにしたりしてとります。
基本グルーブ、パターン
拍子と拍分割の組み合わせで、基本的なリズムのパターン(グルーブ)を作ることができます。
以下では、アクセントの強さを便宜上「弱・中・強」の3段階で示します。手でたたくときの「グ」は握りこぶしで軽く、「パ」は手のひらでたたきます。パの方が大きく響くので、強いアクセントに使います。いずれのグルーブも、足踏みしながら、太ももやお腹を手でたたいてみましょう。
(ポピュラーの)4拍子 基本分割 1/2
最もよく使われると思われるグルーブは、いわゆる8ビート(8th note feel)と呼ばれる、4拍子・基本分割1/2です。
| 足 | 位置 | 手 |
|---|---|---|
| 足踏み1回目 | 1拍目 | 利き手をグ |
| 足上げ | 1拍目と2拍目の中間点 | 反対の手をグ(パでも良い) |
| 足踏み2回目 | 2拍目 | 利き手をパ |
| 足上げ | 2拍目と3拍目の中間点 | 反対の手をグ(パでも良い) |
| … | ||
4拍子 基本分割 1/3
| 足 | 位置 | 手 |
|---|---|---|
| 足踏み1回目 | 1拍目 | 利き手をグ |
| 踏んだまま | 1拍目と2拍目の1/3の点 | 反対の手をグ |
| 足上げ | 1拍目と2拍目の2/3の点 | 利き手をグ |
| 足踏み2回目 | 2拍目 | 反対の手をパ |
| 踏んだまま | 2拍目と3拍目の1/3の点 | 利き手をグ |
| 足上げ | 2拍目と3拍目の2/3の点 | 反対の手をグ |
| … | ||
手は左右交互にたたくので、1拍に3回たたくこのグルーブでは、強拍(2拍目・4拍目)の「パ」が反対の手になります。
3拍子 基本分割 1/2
| 足 | 位置 | 手 |
|---|---|---|
| 足踏み1回目 | 1拍目 | 利き手をパ |
| 足上げ | 1拍目と2拍目の中間点 | 反対の手をグ |
| 足踏み2回目 | 2拍目 | 利き手をグ |
| 足上げ | 2拍目と3拍目の中間点 | 反対の手をグ |
| 足踏み3回目 | 3拍目 | 利き手をグ |
| 足上げ | 3拍目と次のサイクルの1拍目の中間点 | 反対の手をグ |
| … | ||
3拍子 基本分割 1/3
| 足 | 位置 | 手 |
|---|---|---|
| 足踏み1回目 | 1拍目 | 利き手をパ |
| 踏んだまま | 1拍目と2拍目の1/3の点 | 反対の手をグ |
| 足上げ | 1拍目と2拍目の2/3の点 | 利き手をグ |
| 足踏み2回目 | 2拍目 | 反対の手をグ |
| 踏んだまま | 2拍目と3拍目の1/3の点 | 利き手をグ |
| 足上げ | 2拍目と3拍目の2/3の点 | 反対の手をグ |
| 足踏み3回目 | 3拍目 | 利き手をグ |
| 踏んだまま | 3拍目と次のサイクルの1拍目の1/3の点 | 反対の手をグ |
| 足上げ | 3拍目と次のサイクルの1拍目の2/3の点 | 利き手をグ |
| 足踏み1回目 | 次のサイクルの1拍目 | 反対の手をパ |
| … | ||
1サイクルでたたく回数が9回(奇数)なので、次のサイクルの1拍目は反対の手から始まります。4拍子の基本分割1/3(12回)では毎サイクル利き手に戻りますが、こちらは1拍目の「パ」が左右交互になります。
これらが何のためかは、こちらに書いています: パルスとパターン——メトロノームは足場にすぎない